PEG系成分とは|クレンジングの66%・洗顔の32%に入っている「水と油をなじませる成分」

透明なグラスの水の中に、無数の細かい油滴が均一に分散したまま漂っているマクロ写真 悩み別ケア
水と油がなじんだ状態を卓上で再現したイメージ
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成分表示を眺めていて、「PEG-60水添ヒマシ油」「トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル」といった、読み方すら怪しい名前で手が止まったことはありませんか。名前は違うのに、どれも同じ「PEG」から始まっています。

ネット検索をすると「PEGは避けたほうがいい」という記事が出てきます。ただ、そもそもPEGが何をしている成分なのかを説明したものは意外と少ない。この記事では、まずそこを埋めます。

この記事でわかること(30秒の結論)

  • PEGはポリエチレングリコールの略。エチレンオキシドという小さな単位がいくつ連なったかで「PEG-6」「PEG-150」と名前が変わります。数字は成分名の一部ではなく、つながった数です。
  • 化粧品での主な仕事は「水と油をなじませること」。油そのものにPEGを結合させたもの(PEG-60水添ヒマシ油など)が乳化剤・可溶化剤として働きます。
  • 配合実態は当サイトの成分データベース856商品で実測しました。PEG系の表示があったのはクレンジングで65.8%(120品中79品)、洗顔で31.7%(186品中59品)。全体では40.5%です。
  • 「PEG」と書かれていなくても入っていることがあります。医薬部外品では同じ成分が「ポリオキシエチレン〜」「ポリエチレングリコール1540」と別の名前で表示されるためです。
  • この記事では危険・安全の判定はしません。何をしている成分で、どれだけ使われていて、どんな決まりのもとにあるかという事実の整理に徹します。

この記事でできること・できないこと

先に線を引いておきます。この記事は、PEGが「安全である」とも「危険である」とも判定しません。化粧品成分の安全性評価は、国や地域の行政機関と専門委員会が担っている領域で、一メディアが結論を出せる話ではないからです。

できるのは3つです。PEGが化学的にどういう物質で何の役割を担っているかを説明すること。実際の市販品にどれくらいの割合で入っているかを、自前の成分データベースの実測値で示すこと。そして、いま公的にどんな条件のもとで使われているかを、一次情報から整理して並べることです。

なお「PEGは危険なのか」という噂そのものの検証は、防腐剤やシリコーンなど15成分を横断して扱った化粧品の「危険な成分」は本当に危険?|噂の発端と規制から15成分を検証で扱っています。本記事はそこに載せきれなかった「では実際に何をしているのか」を掘り下げる役割です。

PEGとは何か|数字は「つながった数」

PEGは Polyethylene Glycol(ポリエチレングリコール)の略称にあたります。エチレンオキシドという小さな分子を鎖のようにつないだ、シンプルな構造の水溶性ポリマーです。

ポイントは名前のあとにつく数字です。化粧品の成分表示名では、この数字は平均していくつつながっているか(平均重合度)を表します。PEG-6なら約6個、PEG-150なら約150個。つまり「PEG-6」と「PEG-150」は別の成分というより、同じ鎖の長さ違いです。

鎖が短いものは水にもエタノールにもよく溶け、さらっとした液体です。長くなるほど粘りが出て、ある程度以上では固形に近くなります。同じPEGでも、短いものは溶剤や保水目的、長いものはとろみづけという具合に、使われ方が変わります。

ややこしいのは「同じ成分なのに名前が2つある」こと

化粧品と医薬部外品では、成分表示に使う名称のルールが別々に定められているのです。その結果、まったく同じ物質が別の名前で書かれます。

物質 化粧品の表示名 医薬部外品の表示名
鎖の長さ約6 PEG-6 ポリエチレングリコール300
鎖の長さ約32 PEG-32 ポリエチレングリコール1540
鎖の長さ約150 PEG-150 ポリエチレングリコール6000
ヒマシ油にPEGを結合 PEG-60水添ヒマシ油 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
化粧品側の数字は「つながった数」、医薬部外品側の数字は「平均分子量」を指すため、同じ物質でも数字が一致しません。

「PEGフリーを選んでいるつもりだったのに」という取り違えは、たいていここで起きます。当サイトのデータベースでも、「ポリオキシエチレン〜」という表記があった71商品のうち64商品が医薬部外品でした。表示名が違うだけで、中身は同じ系統です。

化粧品でのPEGの仕事|「水と油の仲介役」が本業

PEG系成分は、大きく3つの顔を持っています。成分表示で見かけるPEGがどれに当たるかは、名前の形でだいたい判別できるのです。

  1. 「PEG-数字」だけの形(PEG-6・PEG-32・PEG-75など)
    PEGそのものです。水にもアルコールにもよく溶けるため、溶けにくい成分を溶かし込む溶剤として、また製品の水分を保つ保水目的で使われます。当サイトのデータベースでも、この形は溶剤・保湿の役割タグが付いています。
  2. 油の名前とPEGが合体した形(PEG-60水添ヒマシ油・トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルなど)
    油の分子に水になじむPEGの鎖をくっつけた成分です。片側が油に、もう片側が水になじむので、本来混ざらない水と油をつなぎとめます。これが乳化剤・可溶化剤で、PEG系のなかで最も出番が多い形です。
  3. シリコーンとPEGが合体した形(PEG-10ジメチコン・PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンなど)
    シリコーン油に水になじむ鎖を付けたもので、日焼け止めやリキッドファンデのように「水と油とパウダーを均一に混ぜ続けたい」処方で使われます。

水と油をなじませるという役割そのものについては、洗顔で汚れが落ちる仕組み|界面活性剤の乳化とクレイの吸着の違いで仕組みから解説しています。PEGはその「乳化」を担当する側の成分だと考えると、位置づけがつかみやすくなります。

配合実態|856商品を数えたらこうなった

ここからが本題です。当サイトの成分データベースには、メーカー公式サイトなどの一次ソースから全成分を転記した市販品856商品分のデータがあります(このデータは成分で見つける、自分の肌ケアで公開しています)。そこで「PEG-」表記のある成分を含む商品を数えました(2026年9月9日時点)。

集計の範囲も先に明示しておきます。今回カウントしたのは、成分表示名に「PEG」または「ポリエチレングリコール」を含むものだけです。ラウレス硫酸Na・セテス-20・ポリソルベート80のように、同じくエチレンオキシドを結合させた成分でも表示名にPEGの文字が出ないものは、今回の集計には含んでいません。実際の「エチレンオキシド付加物」全体で見れば、この記事の数字よりさらに範囲は広がります。

ステップ 収載数 PEG系あり 割合
クレンジング 120品 79品 65.8%
日焼け止め 108品 47品 43.5%
乳液 66品 27品 40.9%
化粧水 159品 60品 37.7%
クリーム 100品 36品 36.0%
パック 20品 7品 35.0%
美容液 97品 32品 33.0%
洗顔 186品 59品 31.7%
当サイト成分データベース856商品の実測(2026年9月9日)。全体では347品・40.5%にPEG系の表示がありました。医薬部外品の「ポリオキシエチレン〜」表記も足すと390品・45.6%になります。

いちばん多いのがクレンジングで、3分の2に入っていました。理由は用途を考えるとはっきりします。クレンジングは油でメイクを浮かせたあと、水で洗い流す必要があるのです。油を水で流せる状態に変えるには、水と油をつなぐ成分が要ります。そこにPEG系の乳化剤・可溶化剤が使われるわけです。

実際、クレンジングで最も多く見つかったのは「トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル」で32品。次が「ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル」で18品と、いずれも油とPEGが合体した乳化剤タイプでした。クレンジングオイルに限れば54品中36品(66.7%)に入っています。剤型ごとの違いはクレンジングとは|役割・仕組み・タイプ別の違いをご覧ください。

洗顔は「31.7%」だが、剤型で大きく割れる

洗顔の31.7%という数字は、実は平均するとぼやけます。同じ洗顔でも、作り方が違えば必要な成分も変わるからです。

剤型 収載数 PEG系あり 割合
洗顔フォーム 71品 38品 53.5%
洗顔フォーム(医薬部外品) 30品 9品 30.0%
洗顔パウダー 20品 5品 25.0%
石鹸(固形) 47品 5品 10.6%
洗顔ステップ内の剤型別。医薬部外品は表示名が「ポリオキシエチレン〜」になる分だけ、PEG表記での検出率が実際より低く出ている点にご注意ください。

チューブ入りの洗顔フォームでは半数以上に入っている一方、固形石鹸では10%程度でした。固形石鹸は油脂とアルカリを反応させて洗浄成分そのものを作る製法なので、そもそも乳化剤を足す必要が薄いのです。石鹸の作りについては石鹸はクレンジングになるのか|界面活性剤としての実力とpH応答性コスメの仕組みで扱っています。

また、粉のまま売られる洗顔パウダーや泥パックのように、水を含まない製品では乳化の必要自体が小さくなるのです。PEGの多さは「その処方がどれだけ水と油を同居させているか」の裏返しだと考えると、数字の意味が見えてきます。

成分表示で見かけるPEG系|実例10種

856商品の中に登場したPEG系成分は116種類ありました。1商品あたり平均1.59種類、最も多い商品では5種類が併記されています。よく見かける顔ぶれを挙げます。

表示名 掲載品数 主な役割
PEG-60水添ヒマシ油 39品 乳化・可溶化(香料や油分を水に溶かし込む)
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル 32品 乳化(クレンジングオイルの主力)
PEG-32 30品 溶剤・保水
PEG-6 27品 溶剤・保水
イソステアリン酸PEG-20グリセリル 24品 乳化
ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル 24品 乳化
PEG-8 21品 溶剤・保水
PEG-75 20品 溶剤・保水
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 19品 乳化・皮膜形成(日焼け止め等)
PEG-40水添ヒマシ油 14品 乳化・可溶化

読み解きのコツは1つだけです。PEGの前後に油の名前(ヒマシ油・イソステアリン酸・ヤシ油脂肪酸・ジメチコンなど)がくっついていたら、それは乳化剤・可溶化剤。PEGと数字だけなら溶剤か保水目的、と当たりを付けられます。

配合順位から見える立ち位置

全成分表示は、原則として配合量の多い順に並びます(1%以下の成分は順不同で構わないというルールがあるため、後半の順位は目安です)。当サイトのデータでは、クレンジングオイルに配合されたPEG系は平均25.5成分中の8.7番目、洗顔フォームでは平均29.6成分中の12.4番目に記載されていました。

前寄りではあるものの、水・油分・洗浄成分といった主役の後ろに位置します。主役ではないが、処方を成立させるために必要な脇役――というのが、数字から読める立ち位置です。

配合量順に並ぶルールの全体像(1%の境目の見つけ方や、着色剤がなぜ最後にまとめて記載されるかなど)は全成分表示の読み方3ルールで詳しく解説しています。

いま、どんな決まりのもとで使われているか

日本の化粧品は、化粧品基準(平成12年厚生省告示第331号)で「配合してはいけない成分」「配合量に上限がある成分」が定められる方式をとっています。表示名に「PEG」「ポリエチレングリコール」を含む成分はこのリストに載っておらず、配合量の上限は設けられていません(同じエチレンオキシド付加物でも、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(8〜10E.O.)には別表第2で上限があります)。上限がないというのは「無制限に入れてよい」という意味ではなく、処方上必要な量を製造販売業者の責任で配合する、という制度設計です。

その上で、海外の専門委員会からは条件付きの見解が出ています。事実として整理すると次のとおりです。

  • 製造時の副生成物について:PEGを作る工程では1,4-ジオキサンという物質がごく微量生じることがあります。EUのSCCS(消費者安全科学委員会)は2015年の意見書で、化粧品(最終製品)中の1,4-ジオキサンは10ppm以下のトレースレベルであれば安全であり、この水準を目標にすべきだと結論しています。国内メーカーも、高度に精製することで不純物を低減していると公表しています。
  • 肌の状態について:米国のCIR(化粧品成分審査委員会)は、PEG類の以前の評価で損傷した皮膚への使用を避ける条件を付けていましたが、2010年の改訂評価(PEG-75などを含む)ではこの条件を外す方針を示しています。そのうえで、表皮まで損傷した皮膚に化粧品を使うこと自体は適切でないとも述べています。また、鎖の短い(分子量の小さい)PEGは損傷した皮膚から吸収されやすいことが、CIRの別の報告書(PEGジエステル類、2015年)に記載されています。
  • アレルギーの頻度について:化粧品としての接触によるアレルギーの大規模な頻度データは、現時点で見当たりません。データがない=問題がない、ではありませんし、逆に頻発しているという根拠もない、という状態です。

「PEGへの抗体を持つ人が多い」という調査を目にすることがありますが、これは注射剤やワクチンなど全身に投与する経路の免疫の話で、化粧品を肌に塗る場合の話とは前提が異なります。混同されやすいポイントなので、区別して読む必要があるのです。

「PEGフリー」を選ぶと何が変わるのか

ここは正直に書きます。PEGを外した処方では、水と油をつなぐ役割が消えるわけではなく、別の乳化剤に置き換わります。ソルビタン系、グリセリン系の乳化剤や、天然由来をうたう糖系の乳化剤などです。

つまり「PEGフリー」は、乳化剤が入っていないという意味ではありません。どの乳化剤を選んだかという処方上の選択であって、それ自体が肌へのやさしさを保証するものでもありません。この構造は「防腐剤フリー」や「グリセリンフリー」とまったく同じで、『防腐剤フリー・無添加』は肌に優しい?よくある誤解と正しい見方や『グリセリンフリー』は正しい?グリセリンの本当の働きと注意点でも同じ論点を扱っています。

実務的な考え方は、次のとおりです。過去にPEG系成分でトラブルが出た経験がある方や、皮膚科で原因成分を特定している方は、成分表示を確認して避ける意味があります。特にきっかけがない方は、PEGの有無を選択の第一基準にするより、洗い上がりの感触や使い続けられるかどうかで判断するほうが実際的です。

よくある質問

Q. PEGとPPGは違うものですか?

別の成分です。PPGはポリプロピレングリコールの略で、つないでいる単位がプロピレンオキシドに変わります。PEGより油になじみやすい性質があり、「PEG/PPG-〇/〇」のように両方を組み合わせた成分も存在します。

Q. 数字が大きいほど強い、ということですか?

強い・弱いという軸ではありません。数字は鎖の長さで、短いほどさらっとして水にもアルコールにも溶けやすく、長いほど粘りが出ます。役割が違うだけで、優劣を表すものではありません。

Q. 泥(クレイ)の洗顔やパックにもPEGは入っていますか?

当サイトのデータでは、パック類20品のうち7品(35.0%)、泥パックに限れば18品中5品(27.8%)でした。水を含まない粉タイプでは乳化の必要が小さいため、チューブ入りのペーストタイプかどうかで傾向が分かれます。

Q. 成分表示に「PEG」が見当たらないのに、実は入っていることはありますか?

医薬部外品では表示ルールが異なり、「ポリオキシエチレン〜」「ポリエチレングリコール1540」といった名称で記載されます。医薬部外品の化粧水・乳液・美容液などを使っている場合は、この表記も合わせて確認してください。

まとめ

PEGは、水と油をなじませるという地味な仕事のために、市販品の4割前後に入っている成分群でした。クレンジングで65.8%と突出しているのは、油で落として水で流すという工程が、その仲介役を必要とするからです。

成分表示で名前を見つけたときに思い出してほしいのは、次の3点です。数字は鎖の長さであって強さではないこと。前後に油の名前が付いていれば乳化剤だということ。医薬部外品では別名で書かれること。この3つがわかっていれば、「知らない名前が並んでいる」という不安の大半は、「役割のわかる脇役が並んでいる」に変わります。

そのうえで、PEGを避けるかどうかは体質と経験で決まる個別の判断です。一律の正解はありません。

成分と処方の関係をもう一段深く見たい方は、乳化そのものの仕組みを解説した記事が参考になります。
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データについて:本文の件数・割合は、泥ラボの成分データベース(2026年8月26日〜9月4日に、各メーカー公式サイト等に掲載された全成分表示を転記・照合した市販品 約850品)を、記事公開時点の収載データで編集部が集計したものです。収載商品は編集部が市場調査で選んだもので無作為抽出ではないため、市場全体のシェアや売れ筋の割合を示すものではありません。

参考資料

運営について:この記事は「泥ラボ」編集部が、公開されている一次情報と当サイトの成分データベース(市販品856商品の全成分をメーカー公式サイト等の一次ソースから転記したもの)にもとづいて作成しています。配合割合はいずれも2026年9月9日時点の収載データによる集計値で、市場全体の統計ではありません。特定の成分や商品の安全性を保証・否定するものではなく、肌に異常が出た場合や症状が続く場合は医療機関にご相談ください。
主な参照先:厚生労働省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)/日本化粧品工業会 表示名称作成ガイドライン/米国CIR 各成分安全性評価報告書/EU SCCS Opinion(SCCS/1570/15)/花王「PEG(ポリエチレングリコール)」に関する公表資料

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