くちゃ(クチャ)の産地はどこ?沖縄・八重瀬の地層「島尻層群」と化粧品になるまで

沖縄の地層から掘り出したままのくちゃ(海の粘土)の原土のかたまりと、こぼれた微細な泥の粉 くちゃ・産地/一次データ
編集方針:基準を公開して比較広告・PRは明記一次情報にもとづく
30秒でわかる結論「くちゃ」は、沖縄本島南部(八重瀬など)でとれる海の泥。数百万年前の海の底に積もった泥が、長い時間をかけて地層になったものです。掘ったそのままではなく、いくつもの手間を経て化粧品用の泥になります。要点はこの4つです。

  • 産地は沖縄本島南部:八重瀬をはじめとする南部の地層(島尻層群)にある、きめの細かい海の粘土。同じ地層は宮古島から鹿児島県の喜界島まで分布していて、「くちゃ」は沖縄の方言での呼び名です。
  • 生まれは”海の底”:はるか昔、海底にゆっくり積もった微細な泥。化粧品の全成分表示では「海シルト」(海の沈積物を指す表示名称)と書かれます。
  • 粒をそろえて化粧品用に:くちゃの地層には細かい砂の層もはさまっているため、一般に、水に溶いて細かい粒を選り分ける「分級」などで粒の大きさをそろえます。
  • 工程は作り手しだい:くちゃの加工方法を定めた公的な標準工程はなく、どこまで手をかけるかは作り手によって違います。産地と作り方が見えるものを選ぶ意味がここにあります。

この記事では、くちゃが「どこで・どう生まれ・どうやって化粧品になるのか」を、産地と工程からたどります。素材としての正体や成分はくちゃとは|沖縄の海泥の正体と成分にまとめています。

くちゃはどこでとれる?|沖縄本島南部・八重瀬の海泥

くちゃがとれるのは、沖縄本島の南部です。産業技術総合研究所の地質図の説明書では、くちゃの地層(島尻層群)の与那原層が、与那原町から旧東風平町(いまの八重瀬(やえせ)町)にかけて極めて広い範囲に発達しているとされています。地表近くの畑の土「ジャーガル」はこの泥岩が風化してできた土で、その下に眠る泥岩がくちゃです。

沖縄のどこにでもあるわけではありません。

ポイントは、くちゃが沖縄のどこにでもある土ではなく、特定の地層(島尻層群)に含まれる泥だということ。沖縄本島では、この地層からできた土「ジャーガル」が中南部一帯に分布しています(沖縄総合事務局)。産地がはっきりしているからこそ、「沖縄の海の泥」として選ぶ意味があります。

どうやってできた?|数百万年前の海の底から

くちゃのはじまりは、はるか昔(数百万年前)の海の底。当時この一帯は海で、大陸棚の縁から「半深海」と呼ばれる深さの海底に、細かい泥がゆっくりと降り積もっていきました。

それが長い年月をかけて押し固められ、青灰色のシルト岩(泥岩)を主体とする地層になりました。土壌や農業の資料では「泥灰岩(でいかいがん)」と書かれることもあり、呼び方は分野によって異なります。いま私たちが手にするくちゃは、その地層を掘り出したものです。

しっかりとは固まっていない泥岩のため風化しやすく、乾くと灰白色になるのが特徴で、沖縄では畑の土を入れ替えて改良する「客土」にも使われてきました(産業技術総合研究所の地質図説明書)。

粒子の細かさが肌あたりや使い心地にどう効くかは、後半で説明します。

地質の記録では、この地層(島尻層群)は約780万〜200万年前に海底に泥が積もってできたとされています(出典:沖縄県立博物館・美術館 学芸員コラム)。

地質調査の報告では、主成分として石英・雲母粘土鉱物や鉄分を含む緑泥石が挙げられています(出典:産業技術総合研究所 地質調査総合センター「地質調査所月報」第30巻1号)。

同じ報告(1979年「沖縄島の粘土資源」)では、緑泥石の一部は風化によってモンモリロナイトに似た鉱物に変わっていて、少量のカオリン鉱物も見つかったとされています。くちゃが風化してできた土「ジャーガル」の主な粘土鉱物は、スメクタイト(モンモリロナイト)・イライト・カオリナイトと報告されています(内閣府 沖縄総合事務局)。

「沖縄ならでは」の泥|くちゃという名前と産地

クレイ(泥)にはガスール(モロッコ)、死海泥(イスラエル・ヨルダン)など、世界各地に”ご当地の泥”があります。その中でくちゃは、沖縄の方言で名づけられ、沖縄の地層(島尻層群)に由来する泥です。

多くのくちゃコスメが「沖縄」「琉球」を掲げるのは、この産地とのつながりを伝えるためです。

ただし「珍しい=良い」ではありません。産地が同じでも、どの深さの層か・どのグレードか・どこまで丁寧に仕上げたかで、手ざわりも使い心地も変わります。

だからこそ、次に説明する「掘り出してから化粧品になるまで」の工程が効いてきます。

掘り出しから化粧品になるまで|くちゃができるまでの工程

地層から掘り出したくちゃは、そのまま肌に使えるわけではありません。くちゃの加工工程を示した公的な資料は見当たりませんが、天然の泥を化粧品の原料にする場合、一般には次のような手間を経ます(順番や方法は作り手によって異なります)。

  1. 採取(掘り出す):南部の地層から、目的の粘土層を掘り出します。
  2. 異物を除く:石・砂・木くずなど、泥以外のものを取り除きます。
  3. 分級(粒をそろえる):水に溶いて、細かい粒だけを選り分けます。使い心地に関わりやすい工程です。
  4. 乾かす:水分を飛ばして、扱いやすい状態にします。
  5. 衛生的に整える:洗い流して使う泥として、加熱などで衛生面を整えます。
  6. 検査・梱包:粒の細かさや品質を確かめ、製品用に包装します。

つまり、「掘ったまま」と「化粧品グレード」の間には、いくつもの手間があるということ。同じ”沖縄のくちゃ”でも、この工程のかけ方で仕上がりが変わります。

衛生面については、日本化粧品工業会が、化粧品の微生物の限度値を定めた国際規格ISO 17516を自主基準として採用しています(2015年制定)。この基準は完成した化粧品に対するもので、殺菌の方法(加熱など)や原料の管理のしかたは作り手によって異なります。

なぜ”きめの細かさ”に手間をかけるのか|分級と使い心地

使い心地に関わりやすいのが「分級」=粒のきめをそろえるステップです。くちゃの地層は粘土質のシルトが主体ですが、細かい砂の層もはさんでいるため(産業技術総合研究所)、掘り出したままの泥には粗い粒が混じることがあり、そのまま使うとざらついたり、肌あたりが硬く感じたりすることがあります。

細かい粒だけをそろえた微粒子タイプ(ファイン)にすると、するりと伸びて、なめらかな使い心地になります。

「くちゃ=ザラつく」という印象は、粒の粗いグレードによることもあります。粒の細かさは商品によって違うため、気になる場合は粒度(微粒子/ファインなど)の表記を確かめると選びやすくなります。

くちゃが皮脂や汚れを吸着するといわれる仕組みは泥が皮脂・汚れを吸着する仕組み、他のクレイとの違いは泥の種類 徹底比較で解説しています。

産地が見える泥を選ぶ意味|トレーサビリティ

くちゃに限らず、肌に使うものは「どこで・どうつくられたか」が見えると納得して選べるのです。

産地(沖縄のどのあたりか)、粒度(どのくらい細かいか)、衛生的な仕上げにふれているか。こうした情報を出している作り手ほど、素材への向き合い方が伝わります。

逆に、「沖縄の泥」とだけあって産地も仕上げも見えないものは、粗いグレードなのか、なめらかに整えたものなのか判断がつきません。

くちゃを選ぶときは、物語(沖縄産)だけでなく、産地と作り方まで見えるかを一つの目安にしてみてください。基本の選び方はクレイ洗顔・泥パックとは|種類と選び方の基準にまとめています。

産地や粒度が見えるくちゃを選んだうえで、剤型(洗顔・パウダー・粉パック・練り・石鹸)まで含めて具体的に選ぶなら、くちゃコスメの選び方・比較が参考になります。

「海シルト」を含む市販品はどんな商品?(泥ラボ成分DBの集計)

泥ラボ編集部が全成分表示を集めた市販品854品のうち、全成分に「海シルト」を含む商品は24品(22ブランド)でした。内訳は石鹸10品、洗顔フォーム5品、泥パック5品、洗顔パウダー・洗顔ジェル・クレンジングバーム・クレンジングジェル各1品です。表示は「海シルト」のほか、「海シルト(くちゃ)」「クチャ(海シルト)」「海シルト(沖縄県産クチャ)」のように、くちゃや産地を併記する商品もありました。

なお「海シルト」は日本化粧品工業会の表示名称リストで「海の沈積物」と定義された名前で、くちゃだけを指すものではありません。今回の24品にも、商品名で「氷河泥」をうたう洗顔フォームが1品含まれています。くちゃかどうかは、成分名の併記や商品の説明で確かめてください。

全成分表示は、原則として配合量の多い順に書くルールです(1%以下の成分と着色剤は順不同でもよい)。今回集計した24品で海シルトの記載順を見ると、泥パック5品は平均4.8番目(うち3品が5番目以内)、石鹸10品は平均5.2番目(うち6品が5番目以内)でした。一方、洗顔フォーム5品は平均15.8番目で、5番目以内の商品はありませんでした。今回の集計の範囲では、海シルトが前のほうに書かれていたのは石鹸や泥パックでした。

石鹸では「石けん素地」+海シルトの組み合わせが中心で、沖縄の海洋深層水・月桃・黒糖など、ほかの沖縄素材と組み合わせた例が多く見られました。また24品中、同じ商品にベントナイト(9品)、カオリン(6品)、炭(4品)、シリカ(3品)が一緒に入っている例もありました。

データについて:泥ラボ成分DB(2026年8月26日〜9月4日に、公式サイト等に掲載された全成分表示を転記した市販品854品・約360ブランド)の集計です。編集部が市場調査で選んだ商品で、無作為抽出ではありません。数字は市場全体の傾向や市場シェアを示すものではありません。「記載順」は全成分表示の何番目に書かれているか(1番目から数えた順番)で、配合量そのものではありません。

よくある質問(FAQ)

くちゃは沖縄のどこでとれますか?

おもに沖縄本島の南部です。くちゃの地層(島尻層群)のうち与那原層は、与那原町から八重瀬町にかけて広い範囲に分布しています。同じ地層は宮古島などにもありますが、沖縄全域のどこでも採れるわけではなく、特定の地層に含まれる泥です。

くちゃはなくならないのですか?

くちゃの地層のうち与那原層は、与那原町から八重瀬町にかけて極めて広い範囲に発達し、厚さは代表地点で約800mとされています(産業技術総合研究所の地質図説明書)。ただし化粧品に使うのは異物を除いて粒をそろえた部分で、掘った泥のうちどれだけが化粧品用になるかを示した公的なデータは見当たりません。

丁寧に仕上げたくちゃほど、そのぶんの手間がかかっています。

「琉球泥」「海シルト」も同じ産地のもの?

「海シルト」は全成分表示で使われる名前で、日本化粧品工業会の成分表示名称リストでは「海の沈積物」と定義されており、くちゃだけを指す名前ではありません。市販品には「海シルト(沖縄県産クチャ)」「クチャ(海シルト)」のように、くちゃや産地を併記する例もあります。「琉球泥」は産地を強調した呼び方で、成分表示名ではありません。産地は各商品の説明で確かめてください。呼び名の整理はくちゃとはをどうぞ。

くちゃの産地や品質はどう確かめればいい?

製品や公式サイトで、産地(沖縄のどのあたりか)・粒度(微粒子/ファインか)・衛生的な仕上げにふれているかを見てみてください。

これらを具体的に出している作り手は、素材の扱いに手をかけている目安になります。

まとめ

くちゃは、約780万〜200万年前の海底にたまった泥が地層(島尻層群)になった泥岩で、沖縄本島南部では八重瀬町などに広く分布しています。

掘り出したあと、一般には異物を除き→粒をそろえ(分級)→乾かし→衛生的に整えるという手間を経て、化粧品用の泥になります。どこまで手をかけるかは作り手によって違い、粒の細かさや使い心地にも差が出ます。

だからこそ、産地と作り方が見えるものを選ぶと納得して使えます。

あわせて読みたい:素材としての正体・成分はくちゃとは|沖縄の海泥の正体と成分、他の泥との違いは泥の種類 徹底比較、使い方の基本は泥パックの頻度・置き時間・落とし方もチェックしてみてください。

参考資料

この記事について:本記事は、クレイ/泥スキンケアの専門メディア「泥ラボ」編集部が制作・運営しています。産地・工程の記述は一般に知られた情報にもとづく解説で、特定製品の品質や効果・効能を保証するものではありません。肌に異常を感じた場合は使用を中止し、症状が続く場合は皮膚科医にご相談ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました