結論:迷ったらこの早見で
細かい比較の前に、いちばん多い迷い方への答えを先に置きます。ここだけでも選べます。
- 皮脂・毛穴汚れをしっかり吸着したい(脂性・混合肌):ベントナイト、または粒子が非常に細かいくちゃ。
- 敏感・ゆらぎ肌で、まずやさしいものから:吸着が穏やかとされるカオリン。
- 洗い上がりのつっぱり感を抑えたい/全身にも使いたい:ミネラルを含むガスール・死海泥。
- ざらつきが苦手・肌当たり重視:粒子の細かさで選ぶ(=くちゃや微粒子タイプ)。
「洗浄力が強い=良い」ではありません。取りすぎるとつっぱるので、自分の皮脂量・肌質に合わせるのが正解です。以下で理由まで見ていきます。
比較する4つの軸(この記事の物差し)
種類ごとの印象だけで比べると、迷ってしまいがちです。泥ラボは、成分として説明できる次の4軸で横断的に見ます。
- 鉱物の種類(型):カオリナイトのような1:1型(非膨潤)か、モンモリロナイトのような2:1型(膨潤性)か。ここが吸着力の土台になります。
- pHの傾向:弱酸性寄り〜中性〜弱アルカリ寄り。原料・製品・測定条件で幅が出るため、あくまで「傾向」として見ます。
- 吸着・洗浄の強さ:皮脂・汚れをどれだけ吸い取るか。強いほどさっぱりしますが、そのぶん取りすぎには注意です。
- 粒子の細かさ・使用感:細かいほど肌当たりがなめらかになる傾向があります(クレイの粒子径の違いで詳しく解説)。成分表示には出ないので、見極めが要ります。
5種(カオリン・ガスール・ベントナイト・海泥・くちゃ)を一枚で比較
まずは全体像から。●は吸着・洗浄の強さの目安で、多いほど強くなります。「向く肌」と「吸着の強さ」から見てください。
| 種類 | 鉱物/主成分(型) | pHの傾向 | 吸着・洗浄 | 向く肌・使い方 |
|---|---|---|---|---|
| カオリン | カオリナイト(1:1型・非膨潤) | 弱酸性寄り | ●●●●● | 敏感・乾燥〜普通/デイリー洗顔 |
| ベントナイト | モンモリロナイト(2:1型・膨潤性) | 中性〜弱アルカリ寄り | ●●●●● | 脂性・混合/毛穴汚れの集中パック |
| ガスール | スティーブンサイト(スメクタイト系) | 中性付近とされる | ●●●●● | つっぱり感を抑えたい/洗顔・全身 |
| くちゃ | 島尻層群の泥岩(沖縄の海成の泥) | 中性〜弱アルカリ寄り | ●●●●● | 皮脂・毛穴が気になる/洗顔・パック |
| 死海泥 | 粘土鉱物(イライト・スメクタイト混合層鉱物など)+塩分 | 中性〜弱アルカリ寄り | ●●●●● | しっとり系のパック(塩分が合わない場合も) |
※pHや吸着の強さは原料・製品・測定条件で幅があります。表は各種の一般的な傾向の目安で、個々の製品の数値を保証するものではありません。
種類別の詳しい特徴
カオリン(いちばん穏やかな基準点)
主成分はカオリナイトです。層が水を含んでも膨らまない1:1型(非膨潤)で、陽イオン交換能も小さく、クレイの中では吸着が穏やかな部類にあたります。
白〜微黄色のきめ細かい粉で、肌当たりがやさしいのも特徴。弱酸性寄りとされる例もありますが、pHは原料・製品・測定条件で幅があります。
敏感・乾燥〜普通肌でも比較的使いやすいタイプです。ただし高配合・長時間だと乾燥を感じることもあり、その場合は頻度と保湿で調整します。「まず失敗しにくい一枚」を探すならここが基準です。
ベントナイト(吸着力はトップクラス)
主成分はモンモリロナイトです。水を含むと層のあいだが開く2:1型(膨潤性)で、見た目の量に対して表面積が非常に大きくなります。そのぶん皮脂・汚れをよく吸着します。
陽イオンをやり取りする力(陽イオン交換能)も高く、5種の中では吸着・洗浄が強い部類とされます。
したがって、脂性・混合肌の集中パックに向きます。ただし取りすぎるとつっぱりやすいため、乾燥肌は頻度控えめ+しっかり保湿が前提です。詳しい仕組みは泥はなぜ皮脂・汚れを落とせる?|吸着の仕組みで解説しています。
ガスール(ミネラルでしっとり系)
モロッコ産のクレイ(表示名称は「モロッコ溶岩クレイ」)で、主鉱物はマグネシウムを多く含むスティーブンサイト(スメクタイト系)です。名前に「溶岩」とありますが、産地の鉱床は古い時代(第三紀)の湖にたまった堆積物です。界面活性剤ではなく粘土の吸着力で汚れを落とすタイプで、洗い上がりが比較的しっとりとされます。
pHは中性付近との記載が多く、洗顔・パックのほか、泡立てずに全身に使う人もいるようです。つっぱり感が苦手な人の選択肢になります。
くちゃ(沖縄の海泥・きめ細かさが持ち味)
沖縄本島南部の地層・島尻層群(約780万〜200万年前)の泥岩は「クチャ」と呼ばれ、成分表示では「海シルト(Sea Silt)」と表示されます。ただし「海シルト」は「海の沈殿物」を指す表示名称で、くちゃ専用ではありません。また「海泥」は商品名などで使われる呼び名で、成分表示の名称ではありません。
鉱物の組成は採掘場所や製品によって異なります。
粒子の細かさが持ち味とされます。化粧品用には粒子を選り分けた(分級した)ものが使われ、粒子の大きさは製品ごとに異なります。この微粒子ゆえに吸着はしっかり、肌当たりはなめらかという両立がしやすいとされます。
ただし、掘ったままの天然くちゃには粗い粒子も混じります。そのため「分級」「微粒子」の表記があるかが見極めどころです。くちゃの基礎は入門ハブのくちゃ解説もあわせてどうぞ。
死海泥(ミネラル塩が豊富)
死海は海ではなく塩分の非常に高い湖で、湖岸の泥質堆積物からはイライト・スメクタイト混合層鉱物やカオリナイトなどの粘土鉱物が報告されています。塩分やミネラルを多く含むのが特徴とされます。塗り伸びがよく、しっとり系のパックとして使われます。
ミネラル塩が肌に合わない・しみると感じる場合や、傷・過敏な肌では避けるのが無難です。
肌質・目的から選ぶ
- 脂性・混合肌/テカリが気になる:ベントナイト・くちゃなど吸着力の高いタイプ。皮脂ケアの考え方は皮脂・テカリ肌の泥洗顔へ。
- 毛穴の汚れ・黒ずみが気になる:吸着力のあるタイプ+正しい頻度で。毛穴の黒ずみ|泥で落とせるもの・落とせないもの、毛穴の開き・詰まりもあわせて。
- 角栓・ざらつきが気になる:角栓ケアと泥パックの考え方を先に。こすらず吸着でゆるめるのが基本です。
- 乾燥・敏感肌:カオリン中心にマイルドなものを、頻度控えめ+保湿セットで。合わないと感じたら中止を。
- 使い方に迷う:頻度・置き時間・落とし方は泥パックの正しい使い方にまとめています。
吸着の強い・弱いは「構造」で決まる
比較表の●の並びには理由があります。泥の粒子は表面積が広く、その面に皮脂や汚れが物理的にくっついて(吸着して)取り込まれます。この差を生むのが、主に粒子の構造です。
水を含んで層が開く膨潤性(モンモリロナイト=ベントナイト)は、表面積が非常に大きくなるため吸着が強くなります。いっぽう、膨らまない非膨潤(カオリナイト=カオリン)は穏やかです。
また一般に、粒子が細かいほど表面積が大きくなり、吸着しやすくなるとされます。つまり「洗浄力が強い・弱い」は、鉱物の型と粒子の細かさでおおまかに説明できます。
仕組みをもっと知りたい方は吸着の仕組みへ。
よくある質問(FAQ)
ガスールとベントナイト、どっちが強い?
吸着・洗浄の強さは、一般にベントナイトのほうが強いとされます。ガスールはミネラルを含み、しっとり寄りです。さっぱり落としたい脂性肌はベントナイト、つっぱりを抑えたいならガスール、という選び分けが目安になります。
敏感肌にはどれがいい?
穏やかとされるカオリン系が選ばれやすいです。ただし「天然=誰にでもやさしい」ではありません。必ずパッチテストをし、刺激を感じたら中止してください。
くちゃは他のクレイと何が違う?
沖縄本島南部の地層(島尻層群)の泥岩で、粒子の細かさが持ち味とされます。細かさゆえに、吸着はしっかり・肌当たりはなめらか、を両立しやすいとされます。
ただし製品によって分級(微粒子化)の有無で使用感が変わるので、表記を確認しましょう。
この違いの土台になっているのが、成り立ちです。陸の岩石が風化してできる粘土が多いなかで、くちゃは「海の底で数百万年かけてできた泥」。この成り立ちが、鉱物構成のベースになっています。
地層の年代や成分など、成り立ちの詳しい話は八重瀬のくちゃができるまでをご覧ください。
pHは選ぶときに重要?
目安の一つにはなります。ただし原料・製品・測定条件で幅が出るため、数値の細かい差にこだわりすぎないのが実際的です。それよりも肌質との相性・吸着の強さ・粒子の細かさで選ぶほうが、失敗しにくくなります。
結局どれを買えばいい?
出発点はこうです。脂性・毛穴重視ならベントナイトかくちゃ、敏感・乾燥ならカオリン、つっぱり回避ならガスール・死海泥。
そのうえで粒子の細かさ(分級・微粒子の表記)と、使ったあとの保湿をセットで考えると、肌に合う一品にたどり着きやすくなります。
まとめ
同じ「泥」でも、鉱物の型・pHの傾向・吸着の強さ・粒子の細かさで個性が分かれます。
迷ったら「吸着はベントナイト/くちゃ、穏やかはカオリン、しっとりはガスール・死海泥」を出発点に。最終判断は肌質との相性で決めてください。
粒子の細かさは表示に出にくいので、「分級」「微粒子」の表記や使用感の口コミも手がかりにしてください。
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参考資料
- 沖縄島南部の地質―泥の海とサンゴの海―(学芸員コラム)(沖縄県立博物館・美術館、2026年9月29日確認)
- 海シルト(化粧品表示名称 成分詳細)(Cosmetic-Info.jp/日本化粧品工業会「化粧品の成分表示名称リスト」No.11収載情報、2026年9月29日確認)
- モロッコ溶岩クレイ(化粧品表示名称 成分詳細)(Cosmetic-Info.jp/日本化粧品工業会「化粧品の成分表示名称リスト」No.12収載情報、2026年9月29日確認)
- Amended Safety Assessment of Naturally-Sourced Clays as Used in Cosmetics(Cosmetic Ingredient Review、2022年、2026年9月29日確認)
- Basics of Clay Minerals and Their Characteristic Properties(IntechOpen『Clay and Clay Minerals』、2021年、2026年9月29日確認)
- Mineralogical and physicochemical investigation of Mg-smectite from Jbel Ghassoul, Morocco(Clays and Clay Minerals 57(2)、2009年、2026年9月29日確認)
- Textural Transition and Genetic Relationship between Precursor Stevensite and Sepiolite in Lacustrine Sediments (Jbel Rhassoul, Morocco)(Clays and Clay Minerals 45(3)、1997年、2026年9月29日確認)
- Characterization of the clayey sediments in the exposed mudflats of the western Dead Sea shore(Clay Minerals 58、2023年、2026年9月29日確認)


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